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cuckoo

見たもの(主に本と漫画と映画)の記録とふわっとした感想。文体迷子。

【本】ヘンな論文/サンキュータツオ

ヘンな論文

ヘンな論文

図書館で借りた。発売当時、道頓堀のTSUTAYAで見た記憶もある。
当時はどんな論文があるんだろ、くらいの気持ちで完全に流し読みしていたんだけれども、きちんと読んでみると、思っていた以上に論文とは何ぞや、ということについて、おもしろくわかりやすく伝えている本な気がする。やっぱり著者自身学者肌のようだから。単に(突っ込み甲斐があるという意味で)面白がってるわけではなくて、面白みをきちんとわかった上でいじっているので。
面白いしありがたいなあと思った文章を載せておく。

多くの人は、結論だけを知りたがる。しかし、研究で大事なのは、「ほかの可能性」を削っていく作業なのである。これが一般の人の噂話や憶測と、学問の違いである。ほかに考えられる可能性をすべて試し、しらみつぶしに調べていった結果、浮上してきた「犯人」=事実を、疑いようもない状態にまでもっていくのが、「真実」化の作業なのかもしれない。ほとんどの実験は、「こうだ」という仮説を証明するのではなく、「こうではない」という、ほかの可能性の排除が9割を占めるといっていい。ここに敬意を払ってほしい。プロセスも結果である。(p81)

学者の口調が「まわりくどくてわかりにくい」という誹りがある。書いてもしゃべっても、「かもしれない」「可能性がある」「と思われる」、いったいなにが言いたいんだよ、ハッキリ言えよハッキリ! というアレである。
 彼らはハッキリ言っている。「かもしれない」「可能性がある」「と思われる」とハッキリ言っているのだ。(略)1%でも別の可能性が残っている限り、99%確実でも「Aだろう。Aかもしれない」「ほぼAだと言っていい」「Aの可能性がある」と、含みを残す。優秀な学者ほどそうだ。断定口調は、論文では滅多に使われない。自分の主観で判断せず、出てきた事実からたどり着いた結論、という意味で「だと思われる」を使うし、立場をフラットにする意味で、いいとか悪いの判断はしない。(略)
 だから皆さんは研究者の口調から、厳密で正確性を重んじ、先入観を持たないぞ、というプライドを感じ取ってほしい。だって、彼らはつねに自分を疑ってかかる人たちなのだから。(p186-187)

私の場合才能があるわけではなく、創造力も豊かではなく、しらみつぶし系のものしか書けない(あと調査することがめちゃめちゃ好きだから)ので、81ページみたいなこと言われるとなんかありがたいです。結局、大体は考えりゃわかるじゃない、って結論だったりするもの。本文読めばわかるじゃない、みたいな。*1
186ページに関しては、文句を言うなってことではなく、いちおう考えた上でその表現を使ってるんですよ…みたいなとこを、理解していただきたいなっていう…。いずれも自分への励まし・慰めのためのものです。ありがとうタツオさん。
あと彼のすごいなあと思ったところは本人にコンタクトとってるところだよね。できる限り。まあ本にするという目論見があったからということはあるかもしれないけど。
そういえば、この中の、とあるお方が気になり調べてみたところ、どうやらこの本のもとになる文章は、光文社のメルマガかなにかで連載してたみたいですね?調べて分かった範囲では「爆笑!ニッポンの珍論文」というタイトルで2011年頃連載されていたぽい。PDFだけいくつか拾える。メルマガ登録すればもしかしたら読めるのかもしれないけど…5年以上前だしもう残ってないかな。光文社でポシャって、角川に持って行った形なのかなあ…とか、そんなことの方が気になるのでした。

*1:なのにそう受け止められてないことが問題だと思ってるから調べるわけですけどね、私は。